イリオモテヤマネコの特徴、保護活動や減少している原因を紹介します。
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最終更新日:2018/01/10
旅行(Travelling), 生きもの(Living thing)
とてもワイルドでかわいらしいイリオモテヤマネコ(西表山猫)は、沖縄県の西表島で1965年に発見された猫です。
約20万年前の氷河期にアジア大陸と陸続きだったころに西表島周辺に渡来したベンガルヤマネコが祖先ではないか、と言われています。
しかし現在絶滅のおそれがあり、保護活動が行われています。これまでの保全の歴史や特徴、現在抱える問題などを見ていきます。
併せてこちらもどうぞ。
・イリオモテヤマネコ発見まで
・ツシマヤマネコの保護の現状と守るためにできること
・レッドリスト・レッドデータブックと文化財保護法(天然記念物)、鳥獣保護法、種の保存法、ワシントン条約との関係
出典:九州森林管理局ホームページ
**目次**
1.イリオモテヤマネコの保全に関わる歴史と生息状況。ピューマが親戚。
西表島にだけ生息している野生の猫で、国の特別天然記念物(文部科学省)と国内希少野生動植物種(環境省)に指定されています。
現在生息数は100~110匹と推定されていて、環境省のレッドリストでは絶滅危惧IA種に分類されています。これは、もっとも絶滅の恐れが高いというランクです。
イリオモテヤマネコの祖先、ベンガルヤマネコが大陸から西表島周辺に渡ってきた20万年前はちょうどアフリカに、我々の祖先のホモ・サピエンスが出現したころです。そのことを知ると、イリオモテヤマネコは人間が住みつくずいぶん昔から、西表島にいたことがわかりますね。
また世界的に見て、イリオモテヤマネコのようなネコ科の哺乳類が、西表島のような非常に狭いエリアで生息してきたのは非常に珍しいといわれています。
ネコ科には、ヒョウやチーターなどが含まれ、イリオモテヤマネコは系統的にピューマと近い動物ですが、一般的にはネコ科の野生動物は広い生息エリアがないと絶滅してしまいます。
しかしこのイリオモテヤマネコと、対馬に生息するツシマヤマネコの2種は非常に狭い島に生息して長い間、子孫を残してきたという点で特別で、世界的にも研究者の間では注目されています。
ですが残念なことに、イリオモテヤマネコも、ツシマヤマネコも生息数が100頭程度まで減少し、絶滅の恐れが非常に高くなってしまいました。
余談ですが、わざわざアフリカに行かなくても、日本でピューマの親戚が見られるかもしれないって、とってもドキドキしますよね。
1965年に発見されたあと、西表島の開発が進み生息数が非常にわずかであるということがわかり始めると、1977年、英国エディンバラ公から当時の日本の皇太子に宛ててイリオモテヤマネコの保護を訴える手紙が届きました。
これを受け、当時の福田赳夫首相が保護区の設定を検討する旨を返信しました。
また、1972年から国立科学博物館や環境庁(当時)などが生息状況の調査を始めました。
現在、環境省の西表野生生物保護センターや西表森林生態系保全センターなどがイリオモテヤマネコの保護、保全のために生息状況調査や密漁監視などの活動をしています。
西表野生生物保護センターを訪れれば、イリオモテヤマネコの生活史のジオラマや糞、剥製などが展示されており、駐在している環境省のレンジャーさんもいます。
また環境省のレンジャーさんや関係する研究者等はチーム一丸で、死亡して回収された個体の病理解剖や、交通事故などの事故防止対策、人との共存のための家禽類食害防止対策、傷を負った個体のリハビリなどを行っています。素敵な仕事ですね。
2.特徴は? 普通の猫とどこが違うの?
体長が50~60㎝、体重が3~5kgです。
夜行性で、昼間は岩穴などで寝ていて、縄張りの中で行動します。
普通の猫と違い、泳いだり潜水して魚や水鳥を獲ることもあります。
動物食の雑食性で、ネズミ、カルガモ、蛇、トカゲ、コオロギ、カニ、カエルと 何でも食べるようです。
普通の猫との外観の違いは、丸い耳と耳裏の一部が白いこと。
額に縦じま模様があり、目の回りが白くくま取りされています。
胴長短足でしっぽが太く長いです。
普通の野生猫が小型哺乳類を主に餌にするのに比べ、イリオモテヤマネコは上記のように広範囲の動物を食べます。
これは世界で類を見ない特徴です。
また、この雑食性のせいか、体臭が非常に強いです。
鳴き声は普通の猫とあまり変わらないようですが、元々それほど鳴かないそうです。
3.なぜ絶滅が心配されているの?
普通猫は一度に5~8匹産むと言われますが、イリオモテヤマネコは1~3匹で、少ないのです。
また、行動圏内に沖縄県道215号が走っていて、生まれたばかりの子ヤマネコの中にはそこを横断する時に交通事故にあうものが毎年数匹います。
さらに、犬に食べられたりイノシシ用の罠に捕えられることもあります。
また、飼い猫や野良猫との競合や交雑、伝染病なども心配されています。
今の所見つかってはいませんが、猫エイズに感染する可能性もあります。
ただ、多くの人の保護によって生態が何とか守られてはいるものの、そのことによって不利益を被ったり土地開発が進まない、と異議を訴える人も少なくないようです。
4.西表島の自然、人とヤマネコは共存できるの?
西表島は人口2400人ほど(2016年)で、農業と観光で成り立っている島です。しかも人の居住地域は島全体の10%に満たないほどです。
とても美しい星の形をした砂がちりばめられた、星の砂ビーチがあることでも有名です。星の砂ビーチには民宿やキャンプ場もあり、また夜間には、イリオモテボタルやヤエヤマボタルが草むらで光っている幻想的な光景が見られるところです。
一方で、このような自然を生かし、街を経済的に潤すためにリゾート開発を期待している人たちもいて、現在つぎつぎと新しい民宿やロッジなどが出来ています。そのことにより破壊される自然があり、自然と人とヤマネコの共存はなかなか難しい問題をはらんでいるようです。
また島には、イリオモテヤマネコの他にも希少な動植物が多く生息していて、ウミガメが産卵に訪れるビーチが大規模リゾート開発され、明かりを警戒したウミガメの産卵が減少したり、生まれた子ガメが海に向かわずにリゾートの方向へ進んで死んでしまったりといった影響なども指摘されています。
加えて、小さな島に訪れる観光客の増加や、砂浜に国内外から漂着するゴミ処理の問題も年々大きくなっています。訪れたことがあれば、人のあまり来ない海岸を埋め尽くすゴミの量に圧倒されるでしょう。
沖縄県が行った西表島の5㎞の海岸調査では年間229立方メートルのゴミが漂着していました。ほとんどは海外からです。
ひと1人が1年間に出すゴミの量は182㎏程度です(1日0.5㎏程度)。ゴミは包装用紙やプラスチック、ペットボトルなど軽くてかさ張るものが多いので、182㎏を立法換算するのは難しいのですが、1㎏の水は0.001立法メートルですので、182kgのゴミは0.182立方メートルとしましょう。
たった5kmの海岸に229立方メートルのゴミが漂着するということは、言い換えると1,258人分のゴミ量(229÷0.182=1258)が毎年5kmの長さの海岸に漂着するということです。
周囲130㎞の西表島全体で計算すると、年間で、5Kmの26倍の、32,714人分のゴミ(1,258人 X (130÷5km))が漂着するということです。
西表島の人口は2,402人(2016年1月末現在)です。その島に、年間3万2千人分のゴミが流れ着く。。。。。恐ろしいことになっています。そのゴミの一部は、ウミガメ、ウミドリ、魚やイルカなどの口に入り、また、イリオモテヤマネコの住むマングローブの沿岸を埋め尽くしていくのです。
島民の手により、ビーチの可能な範囲でゴミ拾いが頻繁に行われていますが、とても追いつきません。また、燃やせるものは島内の小型の焼却炉で燃やしますが、燃やしたゴミの焼却灰や焼却できないものを埋め立てるために、2005年には島に最終処分場を作りました。
しかし、いつまで埋め立てられるのでしょうか?
埋め立ての終わった場所や、次に埋め立てる場所はどうするのでしょうか?
5.イリオモテヤマネコは絶滅してしまうの?
中型の哺乳類であるイリオモテヤマネコの場合、研究者によっては、生息数が100頭程度を下回ると、個体群の維持が難しいのではないかという人もいます。
それは、(1)近親交配による遺伝的多様性の喪失から、障害のある個体が多く生まれるようになったり、(2)生息数を維持・増加するための適齢期の配偶者の獲得が難しくなったり、(3)突発的な疫病の流行や天災により一気に個体数が壊滅的に減少してしまったりして、絶滅するリスクが高くなる生息数であるというようなことが指摘されているからです。
加えて(4)ゴミの埋め立てや漂着、西表島の観光開発により、生息地がどんどん狭まっていくとしたら、、、単純に住む場所がなくなってしまいます。
このヤマネコが絶滅してしまったら。。。自分のペットではないのに、そう考えただけで悲しくなり胸が締め付けられてしまうのはなぜでしょうか(-_-)。
さまざまな課題があったとしても、私たちにできることからやっていくしかありません。
一人ひとりにできることは、たとえば海岸のゴミ拾いだったり、ヤマネコを取り巻く現状を訴えることだったり、保全に取り組むNPOに寄付をしたり、開発されそうな生息地を買収して保全することだったり、アジアの他の国から流れ着くゴミを減らすための取り組みを進めたり。
まずは小さなことから始めて、継続していきましょう。
その先に、イリオモテヤマネコの絶滅を防ぐことが見えてきます。
併せてこちらもどうぞ。
・イリオモテヤマネコ発見まで
・ツシマヤマネコの保護の現状と守るためにできること
・レッドリスト・レッドデータブックと文化財保護法(天然記念物)、鳥獣保護法、種の保存法、ワシントン条約との関係
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