ツシマヤマネコの飼育、守る会、動物園や保護の現状、特徴などと守るためにできること
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最終更新日:2018/02/20
旅行(Travelling), 生きもの(Living thing)
ツシマヤマネコは、長崎県の対馬にのみ生息しているヤマネコで、今では絶滅危惧IA類に分類されています。
昔は300頭程度生息していたツシマヤマネコは、エサや生息場所の減少、そして交通事故や病気などの影響から、現在では100頭程度となり、絶滅の危機に陥っています。
迫りくる危機、自治体や動物園、地元住民や民間団体などの保護の取組み、そして私たちにできることを紹介します。
併せてこちらもどうぞ
・イリオモテヤマネコの特徴、保護活動や減少している原因を紹介します。
・レッドリスト・レッドデータブックと文化財保護法(天然記念物)、鳥獣保護法、種の保存法、ワシントン条約との関係
**目次**
1.ツシマヤマネコの生息する対馬とは
出典:環境省ホームページ (http://kyushu.env.go.jp/twcc/photo/img/tomoo01.jpg)
名前のとおり、ツシマヤマネコは、対馬にのみ生息しています。
では対馬はどこにあるのでしょうか?
対馬は、九州地方の長崎県にあります。対馬と一言でいっても、その形状は、一番大きい対馬島が南北に細長い形になっており、その周辺にたくさんの小島があり、それらをすべて合わせて「対馬」と言っています。
対馬は日本第十位の島面積(708.7平方キロ)を持っています。ただ単に「対馬」という事もあれば、「対馬列島」もしくは「対馬諸島」と呼ばれることもあります。
主島の対馬島は、北部を「上島(かみじま)」、南部を「下島(しもじま)」と呼んでいます。
現在は島となっていますが、過去をさかのぼっていくと、大陸とつながって陸続きであったことが様々な研究を通して分かっています。対馬では、大陸と同じ動植物が見られますが、このことがそれを証明しています。
また、対馬にしか生息していない動植物もいますし、大陸には生息しても対馬には生息していないものもいます。
これらのことや動植物名に、ツシマとついている種もたくさんあること等から、対馬は独特で多様な動植物を育んできた土地であることが分かります。
2.何頭くらいいる?ツシマヤマネコ
ツシマヤマネコと同じように「ヤマネコ」という名がついている動物、他に知っていますか?
そう、「イリオモテヤマネコ」です。これらは、トラやヒョウと同じネコ科の動物です。親せきにトラやライオンなどがいるのです(下の図参照)。
どちらかというとイリオモテヤマネコの方がツシマヤマネコよりも知られているよう。
イリオモテヤマネコは、環境省の前身の環境庁時代に1991年に公表されたレッドデータブックで「絶滅危惧種(E)」に分類されたのち、さらに細かく分類された1998年の環境省レッドリストで最初は絶滅危惧IB類(EN)に指定され、その後2007年にランクが上がってしまい、IA類(CR)となった歴史があります。
しかし、ツシマヤマネコは、最初からIA類と危機的状況。
1991年の環境庁時代に公表されたレッドデータブックで「絶滅危惧種(E)」に分類されたのち、1998年のレッドリストでIA類となりました。その時にはすでに70~90頭しか生息していないとされていました。
1970年代頃までは、対馬島全域で見られていたツシマヤマネコですが、その後は急激に目撃情報などが減り、1984年以降、下島での生息情報が全く無くなってしまいました。
上島にしか生息が確認されなくなったのです。
これは、下島の急速な都市化や、森林の人工林化、田や畑の休耕や宅地開発によるものと考えられています。その結果として、生息場所の里山の消失や、餌となるネズミやカエルなどが取れなくなったのです。
ツシマヤマネコは泳ぎが得意です。
上島と下島の間を泳いで渡っている個体を見ている人もいますが、今まで、下島に渡った個体がいても、その後、生息状況がプツンと途切れてしまっていました。
それでは、上島に集中しているツシマヤマネコは、一体どのくらいの数が生息しているのでしょうか?
対馬には、対馬野生生物保護センター(Tsushima Wildlife Conservation Center)があります。ここでは、保護され何らかの理由で野生に戻せないツシマヤマネコ等を飼育しており、随時見学することができます。
出典:環境省ホームページ (http://kyushu.env.go.jp/twcc/photo/img/twcc1.jpg)
センター公表資料によると、ツシマヤマネコ生息数は、1960年代には250~300頭であったものが、1980年代には90~125頭に、1990年代には70~90頭にと急減しました。
この数を見ると、30年間でどれだけ減ったか、いいえ、激減したかということが分かります。
ツシマヤマネコは、本来、非常に警戒心が強いヤマネコです。その為、山林の多い対馬で山仕事をしている人でさえも、その姿を見かけることは少ないそうです。
その上、夜行性で、日没から明け方にかけて行動します。これら二つの特徴から、生息の確認が難しいことがわかります。
目視が難しいため、調査ルート上の糞の痕跡調査やセンサーカメラによる自動撮影などからツシマヤマネコの個体数を推測します。
ツシマヤマネコの足跡 出典:環境省ホームページ (http://kyushu.env.go.jp/twcc/photo/img/ashiato01.jpg)
このような調査は、長崎大学や琉球大学の研究グループが、環境省、長崎県や対馬市と協働で実施しています。
3.下島での再発見
暗い話ばかりですが、明るい話もあります。2007年5月に大変なニュースが飛び込んできました。
1984年からツシマヤマネコの生息が確認されていなかった下島で、23年ぶりにツシマヤマネコの生息が確認されたのです。
長崎県の設置したセンサーカメラによる自動撮影の結果、下島の厳原町内山という場所で、ツシマヤマネコの個体が確認されました。
この場所は良好な里山がわずかに残っているため、下島で生息しているとしたらここしかないと目ぼしを付けていた場所です。そのため、予算に限りがある中でセンサーカメラを置いて、継続的に調査を続けてきた場所でした。
出典:環境省ホームページ (http://kyushu.env.go.jp/twcc/photo/img/tsutsuji01.jpg)
環境省の記者発表後、一時、当時のヤフーのトップニュースになるくらい、23年ぶりの発見は大きなニュースでした。
2011年には、同じく下島の美津島町黒瀬の里山で、ツシマヤマネコの個体が確認されました。
4.ツシマヤマネコに関する法規制
ツシマヤマネコを取り巻く法規制は徐々に厳しくなっていきました。
1949年には、鳥獣保護法によりその狩猟が禁止されました。その後、1971年には、国の天然記念物に指定され、さらに1994年には、残念ながら種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定されてしまいました。
種の保存法では、「国内希少野生動植物種」に指定することで、捕獲、所持や商業売買などに法的な規制をかけます。さらに必要な場合に「保護増殖事業計画」というものを作ります。
この「保護増殖事業計画」では、ツシマヤマネコを増やすために必要な対策を書きます。例えば、「将来的に動物園での繁殖個体を野生復帰させる」というようなことを書きます。
ツシマヤマネコの場合、環境省と林野庁で1995年に保護増殖事業計画を作り、生息の確認されていなかった下島に、福岡市動物園などで飼育・繁殖させている個体を放ち、再びツシマヤマネコを住まわせようという計画を進めることとなりました。
このあたりの法律の違いについては、別記事を参照ください。
5.ツシマヤマネコの保護のとりくみ
国や県、ツシマヤマネコ愛護団体などは手をこまねいて減少の過程を見ていたわけではありません。
・国と動物園が手を組んだ!
1997年に「対馬野生生物保護センター」が対馬の上島に建設されました。
ここでは、ツシマヤマネコの生息数調査や交通事故防止活動、センターでのツシマヤマネコの生態等の展示に加え、怪我をしたりして野生に帰れないツシマヤマネコを終生飼育・展示することになりました。
出典:環境省ホームページ (http://kyushu.env.go.jp/twcc/photo/img/kanban1.jpg)
また福岡市動物園でも、怪我をしたり、親からはぐれてしまった子ツシマヤマネなどの飼育及び繁殖が始まりました。
2004年には飼育しているツシマヤマネコの野生環境への「再導入基本構想」が環境省から発表されました。
これは生息が確認できなかった下島への再導入を見越してのことでしたが、2007年に23年ぶりに生息が確認されたことで、現場は一時混乱しました。学者の中には、「野生の個体がいるのに、一度人間に飼育された個体を下島に放すべきではない」という考えの人もいるからです。
2006年からは、日本全国の動物園でのツシマヤマネコの分散飼育が始まりました。
ツシマヤマネコはそれまで対馬野生生物センターと福岡市動物園でだけ飼育されてきました。その目的は、野生復帰出来ない個体の終生飼育及び展示、また将来的な野生復帰を見据えた飼育下繁殖でした。
日本の動物園全体が集まる「日本動物園水族館協会(JAZA)」では、動物園水族館の存在目的を、単に動物を狭い檻に閉じ込めてお客に見せるのではなく、絶滅のおそれのある個体の飼育・繁殖・野生復帰への協力を通じて保存していくと言っています。
JAZAでの話し合いに基づき、福岡市動物園での飼育のみでなく、将来的な野生復帰を見据えて100頭程度の飼育下個体を確保するため、東京の井の頭自然文化園、横浜の横浜動物園ズーラシア、愛知の東山動植物園などで飼育・繁殖を進めることとなり、一部は公開することとしました。
また分散飼育をすることで、ある動物園の個体に感染症などが発生した場合に、他の個体が病気になるリスクを減らすことも可能となりました。
余談になりますが、JAZAのツシマヤマネコ保護の取組みは、国からお金をもらってやっているわけではなく、絶滅のおそれのある種を保存したいという思いから無償で行われています。
初期のころは、飼育している個体を展示することが禁止されたため、動物園側にほとんどメリットがなく、国に対して大変な反発を持っているところもありました。
純粋な自然保護の気持ちで、経済的負担をして飼育を続けることは素晴らしいことですが、動物園の組織内には、メリットを求めるグループの声もあるのです。
しかし、方針が改められ、今では飼育している個体をなるべく展示して、動物園に来てくれるお客さんにも見てもらえることになりました。
2007年には、全国的に個人でのとらばさみの使用が禁止されました。
とらばさみは、金属製の歯の付いた罠で、罠にかかった動物の足などを致命的に傷付けてしまいます。有害鳥獣駆除の道具としてホームセンターなどにかつて売られていました。
個人の畑周辺に設置されたとらばさみにかかり、歩けなくなる大けがを負ってしまうツシマヤマネコを守ることが出来るようになりました。
2014年にはついに下島の内山地区に、飼育して増やしたツシマヤマネコを野生に戻す訓練施設「野生順化ステーション」が完成し、野外ケージを設置しケージ内の植生などの環境整備が始まりました。2016年の1年間は近似種のイエネコを通したモニタリング等の飼育訓練を実施しています。
・地元住民の取組
民間での取り組みもあります。
対馬には、NPO法人「ツシマヤマネコを守る会」によって用地取得が進められている「ヤマネコ保護区」というエリアがあります。
ツシマヤマネコが安心して生息するためには、連続した広い土地が必要です。いくら広くても道路や手が大きく加えられた河川などで分断されてしまっていてはだめなのです。飛び地ではいけないのです。
この保護区は、土地を買い上げることでツシマヤマネコの生息地を保護している活動です。会の皆さんの会費や寄付、ポストカードの売り上げなどがこの費用に回されています。
また、(財)自然保護助成基金、(社)日本ナショナル・トラスト協会、(財)日本生態系協会などの全国レベルのNPOから土地買い上げ資金の助成も受けています。
他にも「ツシマヤマネコを守る会」では、2003年から上島の休耕地を借り上げて、ソバや大豆をメンバーが育て、収穫はせずに放置し、鳥やネズミなどの餌にしています。
鳥やネズミなどの小動物を増やし、ツシマヤマネコの餌にしようということです。
また、一部の山林内では関係者に同意を得て、ツシマヤマネコへ給餌活動もしています。
ツシマヤマネコ米を作る、「佐護ヤマネコ稲作研究会」というグループもあります。
ツシマヤマネコは「田ネコ」「里ネコ」などと言われ、餌になるカエルやウナギなどを取りに田んぼによく顔を出します。
しかし、圃場整備などで餌となる生きものが減った田んぼが多くなったため、「佐護ヤマネコ稲作研究会」では、農薬や化学肥料などをなるべく使わないようにして、生きものがたくさん住める田んぼでお米「ツシマヤマネコ米」を作っていくことにしました。
手で雑草を取ったりする手間が増えるので、ツシマヤマネコ米は少し高い金額で販売されています。また売り上げの一部が、ツシマヤマネコの保護活動に充てられます。ステキな活動ですね。
6.なぜこんなにも数が減っているのか 様々な危機
30年間の間に3分の1にまでその生息数が減ってしまったのには、いろいろな要因があります。
・生息環境悪化
対馬のほとんどは山林です。そのうち90%は民有林であると言われています。
この山はだれだれさんのもの、あっちの山はだれだれさんのもの、という状態です。私有地が多く、開発の規制が難しいのです。
国指定の鳥獣保護区は1、173ヘクタール(伊奈鳥獣保護区)ありますが、対馬全体の面積約70、000ヘクタールの1.6%にしかすぎません。
イリオモテヤマネコの生息する西表島全体の35%(10、218ヘクタール)が鳥獣保護区になっているのに比べると、大変わずかであることがわかります。
対馬は古くから良質な木がたくさん産出されてきました。ここで取れた材木は高値で売買されたことから、林業が盛んになり、森林伐採が進みました。また、畑や田んぼなどの耕地が少ないため、これらの土地を増やすべく、開墾が進んだ歴史もあります。
その後は、木材価格の低迷や農業の収入が少ないことで人がこの島を離れていき、高齢化が進むなどの理由で、山間部の耕作地が放棄され、山林は放置されるようになりました。
また近年では、ニホンジカ(ツシマジカと区別することもある)が森の下草を食べてしまい、生き物が非常に住みずらい森となっています。加えて、河川改修によりコンクリート護岸が増え、カエルやウナギ、魚、蛇といった生きものが姿を消しています。
田んぼがありそこに水があれば、小動物はたくさん生息しますが、耕作が放棄され、荒れ地や間伐のされない山林に戻っていってしまえば、ツシマヤマネコのエサとなるカヤネズミや野鳥などの小動物は生息が難しくなります。
小動物と同じようにツシマヤマネコも、住処を追われ、そしてエサも不足していったのです。
・減少するエサの競合
ツシマヤマネコは主にネズミ、その中でも特にカヤネズミをエサとします。この他にも野鳥、魚、ヘビ、そして植物なども食べます。幅広いものを餌とする雑食性があります。
時には水辺に出現し、エサを見つけては捕獲します。
同じく対馬に生息するツシマテンやチョウセンイタチも、ツシマヤマネコと同じようなものをエサとしています。その為、環境が悪化し減少していくエサを、他の動物と取り合うことになるのです。
その上、ツシマテンやチョウセンイタチは、ツシマヤマネコよりも雑食性が高く、ツシマヤマネコが食べないようなものも食べるので、生存する確率が高まってくるのです。環境変化に強い、ということが言えます。
・海外資本による島の開発
対馬に行くには福岡空港からの飛行機か、博多港からのフェリー・高速船を使います。しかし実は、韓国に行く方が距離的に近く、釜山港から対馬へは高速船が就航しています。
対馬から釜山へはジェットフォイルで70分ですが、博多までは135分もかかります。
その為、週末や長期休暇中には韓国からたくさんの旅行者が訪れ、ゴルフをしたり温泉に入りに来たりします。人気があるため、徐々に徐々に経営の傾いた日本人の経営するホテル、釣り宿、レストランなどが買い占められ、韓国語で表記するお土産屋などもたくさんあります。
また、開発を見込んで森林を買い占めているという話も聞こえてきます。
2013年には、韓国の業者が、上島で売り出された260万平方メートルの森林の購入に乗り出したこともありますが、多くは海外資本であることを隠した形での購入でしょう。
このような土地の開発により、ツシマヤマネコの生息地が失われる危機があるのです。
・交通事故
道路の整備も進んでいきました。道路を作るという事は、山を切り拓き、森を分断するということです。
ツシマヤマネコの生息範囲は、山の高地から低地まで連続している必要があります。エサを探すときや繁殖期などには、とても広い範囲を縄張りにするからです。
このようなテリトリーを道路が分断してしまうと、移動の際に道路を横断せねばならなくなりました。そこで交通事故にあうということが起きるようになってしまいました。
2000年には、1年間で6頭の交通事故が確認されています(通報・発見されたもののみを集計)。生息数を考えると、とても大きな数であることが分かります。
交通事故にあうのは、親離れをしてすぐのネコが殆どです。まだエサを上手にとることができないため、車に轢かれたカエルなどの動物を道路で食べているときに事故にあいやすいのです。
イリオモテヤマネコやシマフクロウなど、多くの絶滅危惧種に言えることですが、交通事故が大変な脅威なのです。
我々は便利な車に乗りながら自然保護を叫び、一方でその車が大切な生きものを傷つけているのです。
話は逸れますが、自動車産業は車を売り利益を出します。一方で、二酸化炭素・窒素酸化物・PM2.5などを排出したり、絶滅のおそれのある動物を傷つけたりといったことに対する環境保護対策は、私たちの税金で賄われています。
環境破壊に対する金銭的な負担をしないで利益をだす業界、それに対して、増加する医療費や自然保護対策費用などの負担を、車を乗らない人を含んだ国民全体の税金で埋め合わせるというのが、今の社会の構図です。なにか違う気がしますよね。
これは特定の業界が悪いと言っているわけではありません。
環境を破壊する人・業界がその負担をきちんとする社会制度・システムがまだ不完全なのです。
・イエネコなどペットからの影響
イエネコとの接触、ノラ猫との接触による、いわゆるネコエイズの脅威も個体数の激減に関係していると言われています。
保護したツシマヤマネコを検査してみたらこのネコエイズが検出されたということもありました。怪我が治っても、猫エイズにかかってしまっていては、野生に戻すことはできません。
また、全体数が減っているということは、生殖可能なツシマヤマネコの個体数も少ないという事を示しています。
さまざまな要因が複雑に絡み合って、ツシマヤマネコは数を減らしているのです。
7.ツシマヤマネコは絶滅してしまうの?
イリオモテヤマネコの記事でも書いたことですが、中型の哺乳類であるツシマヤマネコの場合、世界中の研究者の漠然としたコンセンサスとして、生息数が100頭程度を下回ると、再び生息数を回復することが難しく、個体群の維持さえ難しいのではないかという話があります。
それは以下のようなリスクがあるからといわれています。
(1)近親交配による遺伝的多様性の喪失から、障害のある個体が多く生まれる
(2)生息数を維持・増加するための適齢期の配偶者の獲得が難しくなる
(3)突発的な疫病の流行や天災により一気に個体数が壊滅的に減少してしまう
幸いなことに、国、自治体、福岡市動物園やJAZAの協力もあり飼育下繁殖個体を増やす取り組みが行われています。また、生息地そのものを確保したり、再生する取組が少しずつ広がろうとしています。
しかし、1960年代に生息数250~300頭であったツシマヤマネコが、たった30年後の1990年代には70~90頭となったことをもう一度真剣に考える必要があります。
急激に減少した理由は何か、そして今現在、その理由を取り除くことが出来たのか、あるいは将来的に出来るのか。
ほんの少し生息場所が増えて、そこに飼育した個体をどんどん導入しても、新たに放された個体は餓死するだけです。食べるものや住む場所が足りていないのですから。
毎年、国や県の会議、飼育や調査の人件費や設備維持費、そして動物園での飼育などには何億円もの予算が投入されているはずです。しかし一方で、ツシマヤマネコは野生動物なので、生息場所さえあれば、いくらでも増えるはずです。
生活する場所さえあれば、野生動物に人間のお世話は必要ないのです。
本当に、ツシマヤマネコを昔の生息数まで増やし、そしてレッドリストの掲載から除外するつもりがあるなら、彼らの生活場所を復元することにお金をかけ、あとは放置すればいいのです。飼育などに毎年お金を投入する必要もありません。
保護活動の本質は、飼育して再導入することではなく、彼らの生活場所を取り戻し、野生の生活を取り戻すことです。
上記のリスクが顕在化し、ツシマヤマネコが絶滅してしまうのか、それともこのリスクが笑い話になるのか、それはこれからの本質的な保護活動にかかっています。
8.わたしたちにできること
まずは、ツシマヤマネコの現状をきちんと知ることが、我々にできることの一つです。展示されている動物園に足を運び、その姿を見ることも行動の一つです。
そして経済的・時間的な余裕があれば、対馬で活動するNPOの会員となったり、寄付をしたりして、里山の復元、ツシマヤマネコ保護のための広報活動や保護区取得の活動などを支えることができます。
ツシマヤマネコの生息環境を整えるために、地元の農家さんたちの活動を通じて作られた、「ツシマヤマネコ米」を買うことだって、間接的にツシマヤマネコの保護につながります。
威嚇した顔はとても迫力がありますが、子ネコはとてもかわいいです。そして大人のツシマヤマネコも、飼い猫と同じとは言えませんが、似たような愛らしさがあります。
この小さな瞳を守っていけるように、我々にできることはたくさんあるのではないでしょうか?
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