スウェーデンの結婚、恋愛事情(サンボと結婚の違いなど)
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最終更新日:2018/02/12
スウェーデン(Sweden), 北欧(North Europe), 生活(Life)
日本で一般的に言われる「結婚」は、入籍をすることによって社会的に、そして法的に「夫婦」とみなされることですが、スウェーデンには、結婚とサンボという2つの制度があり、法的な違いがあります。加えて、同性婚が認められています。
また離婚率が高いスウェーデンですが、離婚後にもスムーズな親子関係や元パートナー同士の関係が築かれているようです。
**目次**
1.同棲も結婚と「似たもの」とみなされる、サンボという制度
日本では、同棲は結婚とみなされません。
今は結婚前にお互いを知るために同棲をし、それから結婚するというカップルが少なくありません。一緒に住むことでお互いを知ることもできるし、何より経済的にお互いを助けられるという良い面もたくさんあります。
一方、残念ながら結婚に行きつくパートナーでなかった場合は、もめごとが起きても法的な保証はあまりありません。
また、籍をいれずに共に生活をおくる「事実婚」と言われる結婚方式(そもそも結婚とはいえないのかもしれませんが)も、日本国内では社会的、法的にとても不安定なものとなっています。
さて、北欧スウェーデンの結婚、そして恋愛事情にはどのようなものがあるのでしょうか。
スウェーデンには「サンボ」というスタイルがあり、これは日本の同棲、事実婚に似ています。もちろん、法的にもある程度守られ、「結婚」という形をとった夫婦とあまり変わらない扱いをされる方式なのです。
サンボ、という言葉は、スウェーデン語で「一緒に住む bor tillsammans(発音は、ボーティルサンマンス)」から来ています。ボーが住む、ティルサンマンスが共に、という単語で、それを短い言葉にして「サンボ」となっています。
学生がルームシェアをすることも、「一緒に住む」ことには変わりありませんが、これはサンボとはいいません。日本でも学生のルームシェアは「同棲」とは言いませんよね。
サンボはただ一緒に住むだけの関係ではありません。結婚に準ずる共同生活、という説明の方が的確かもしれません。きちんと届出をすることでそのカップルはサンボであるとみなされます。そして、このサンボ関係を解消するときも、これまた届出が必要です。
なお、日本にはこのサンボという制度はないため、もしスウェーデン人と現地でサンボになったとしても、日本の戸籍にはなにも影響がないと聞いたことがあります。入籍をもって結婚とする日本の制度とは違うのですね。
2.サンボ、事実婚と結婚の違い
スウェーデンのサンボは、日本でいう「事実婚」に近いものだと思えば我々日本人にも理解しやすいと思います。なお、スウェーデンにもきちんとした「結婚」という形はもちろんあります。事実婚か結婚か。どちらを選択するのかは日本と同じく個人の自由、そのカップルの自由です。
ずっとサンボのままのカップルもいます。最初から結婚という形をとるカップルもいます。そして、数年間サンボであった後、結婚という形に切り替えたカップルもいます。
日本での場合を考えてみましょう。国内でも事実婚のままのカップルも少なくありません。
しかし、事実婚と結婚、やはり何かが違うからこの二つが共存しているのだと考えられます。
日本国内で事実婚と結婚の違いで一番大きいものは、パートナーが亡くなった時に残された方がどうなるか、ということではないでしょうか。言葉を変えれば「遺産相続」です。
現在の民法では、結婚していて子どもがいれば、万が一自分の結婚相手が亡くなった場合、その人が所有していた物は配偶者である自分と子どもとに分けられます。実際は遺産分割協議を行い、家や建物は誰が相続する、現金や株は誰が相続する、と決めることが多いです。
しかし、入籍をしていない事実婚の場合は、「配偶者」ではないので自分には相続権が発生しません。
パートナーが亡くなった時のことを考えるなんて縁起でもない、と思われがちですが、独り身で暮らしていかない、しかし、籍は入れない事実婚を選ぶとなるとこういうことを含め、様々なことで法的に守られない部分も出てくるので、きちんと調べておく必要があるのです。
さて、お国が変わってスウェーデンはどうか、というとやはり事実婚(サンボ)と結婚では法的な保証が異なってきます。
おそらく、事実婚を始めるときはお互いがそれぞれ住んでいたところからなにか使える家具や家電などを持ち寄って新生活を始めることになります。新しくアパートを借りる場合もあるでしょうし、場合によっては家を共同で購入するかもしれません。どちらか一方が現在住んでいるところに生活の拠点を決めるかもしれません。
スウェーデンの事実婚においても、やはり別れることになった場合のことを想定しておく必要があります。これは日本と同じですね。所有物は、サンボ以前に持っていたものは、それはその持ち主のものであり、サンボを始めてから購入したものは共有物とされ、二人で分けることになります。
もしサンボの状態から別れたとしても、二人で築き上げたものは当然半分ずつ。日本にはないですね。
また、シングルマザーになってしまっても高福祉の国ですので、子供を育てやすいという環境もあります。
生まれる子どもの戸籍は1人に1つずつあるので、日本のように非嫡子であることを心配する必要がありません。スウェーデンは個人番号制度を取っていて、戸籍という概念がないのです。正確に言うと戸籍制度はずいぶん昔に廃止しています。
サンボの関係から生まれた子どもに対してスウェーデン社会での就職差別といったことは一切ないようです。ただし、子供が日本に住むとなると、非嫡子であることからなにか困難があるのかもしれません。
また税金が違ってくるようで、年金生活者に対して、結婚している場合の所得に対する基礎控除額が、一人の場合より少なくなっているようです。つまり、基礎控除額が少ない分課税額が増えるので、結婚をしていると多く税金を支払うことになるようです。独り身の高齢者への税負担を軽くするという視点があるようです。
また、相手が亡くなって死別となってしまった場合は、事実婚の時は子ども、兄弟、親族にその者のサンボ以前から所有する遺産が渡ります。配偶者ではない自分は遺言状が無いと受け取れないのです。
事実婚であれ結婚であれ、共に生活を「始める」からには、いつかは何らかの形で「終わり」が来るのです。それらをどう捉えるか、というのが、お国は違っても考えなくてはならないことなのです。スウェーデンであっても日本であってもそれは同じなのです。
また、日本人がスウェーデン人とサンボの関係になるとスウェーデンへの移住許可が申請できます。結婚してなくても、サンボ(オフィシャルな同棲)でいいんです。
これは通称サンボビザと呼ばれているようですが、本当のところはそのような特別のビザはなく、結婚のビザと変わりありません。
このビザがあれば、あちらで仕事をすることもできますし(労働ビザが不要)、90日以上の滞在が可能です。有効期限は1年ないし2年間で、日本に帰国せずともスウェーデン国内で更新が出来ます。また3回目の更新からは永住ビザに変更になるようです。スゴイですね。
3.離婚率が高いスウェーデン しかし、離婚後も親子関係はスムーズ
昨今の日本も決して離婚率が低いとは言えないのでしょうが、スウェーデンの離婚率は、とても高く、結婚した人の半分以上が離婚するようです。
日本では、離婚すると経済力がどうしても男性よりも低い女性が圧倒的に不利な立場に立たされます。子どもがいればなおさら、今後の生活が苦しくなってきてしまいます。
収入格差があるのは日本の今の社会の現実なので、ここを変えないと女性も苦しいままなのですが、その話はここではちょっと置いておいて、「離婚」ということだけについて述べてみます。
スウェーデンに住んでいる間に、現地スウェーデン人のホームパーティーに呼ばれたときの事でした。その場にはたくさんの人がいました。
呼んでくれた主賓の方に離婚歴があることは知っていました。年齢にして60歳後半、70歳に近い方でした。その方の子どもさんが、私の友人で、その人が「実家のホームパーティー」に誘ってくれたのです。
小難しい経済の話などは、スウェーデン語になるとお手上げの私でしたが、日常会話は大丈夫、ということで、ファミリーとはスウェーデン語で話をしていました。
お客が到着する度に、友人が私のことをその人たちに紹介してくれました。そして相手も名前と続柄を紹介してくれました。
最初はよかったのですが、どんどん頭が混乱してきてしまいました。
もともと私の友達は私に、「自分は二人兄弟なんだ」と言っていたからです。
「こちらは、私の父の前の奥さんとの間の子どもで、私にとっては兄にあたる人です。」
「こちらは、私の父の前の奥さんとの間の子どもで、私にとっては、妹にあたる人です。」
ん?兄弟二人じゃなかったっけ?
ここでいう「私」というのは友人の事、ということは、なるほど、腹違いの兄や妹、ということか!
確かに普段よく接しているのは実の兄、いや母を同じくしている兄だけれども、なるほど兄弟はたくさんいたのね、と私はびっくりしたのでした。
それにしても腹違いの兄や妹が、普通に参加するホームパーティー。あちらでは普通のようです。後妻の方も普通に接していました。最近どう?元気にしてた?などととても気軽に。
最近どう?というからには、以前からなにかと交流はしていたのか。うーん、スウェーデンってなんだかすごいな、と私は思ったのでした。
私の友人は、後妻がお母さんなので、よくよく考えたら何とも複雑な人間関係がここには存在しているのだな、と思ったのですが、友人は別にお構いなく、私にもどんどん紹介してきますし、相手も私に話しかけてきたのでした。
パーティーが終わって数日後、またこの友達に会った時に私はこのなんとも言えない戸惑いを伝えました。自分がこれまで生きてきた日本という環境ではなかなかありえないことだ、と。しかしこれもやはりお国柄、結婚制度の違いであることに私は気が付いたのでした。
4.同性婚も認められます。カミングアウトにびっくり、「僕はゲイなんだ」
仲よくしていたスウェーデン人の友達がいました。よく私にスウェーデン語を教えてくれて、宿題も手伝ってくれて、学校から寮に帰ると、「今日の宿題はなに?」とニコニコ。
この青年は私より3歳ほど若く、そして友達がたくさんいました。寮には彼の友達が男女問わず集まってきて、一緒に料理をしたり、テレビを見たりしていました。私の中では「現地でできたたくさんのスウェーデン友人の中の一人」でした。
私がスウェーデンから日本に帰る日が決まり、それを寮の友達にも伝えました。みんな残念ね、などと声をかけてくれ、しかし帰国の日まではなにも変わらずいつものようにみんなで楽しく過ごしていました。
授業も終わってしまったので、「今日の宿題は何?」と聞いてくる友だちの声もなく、それはなんとなくさみしさを感じていました。ある日私がリビングでお茶を飲んでいると、彼が近づいてきて、私の名前を呼びました。
「どうしたの?」と私が答えると
「実はね、僕はゲイなんだよ」と言ったのです。
私はものすごく驚きました。え?ゲイ?!なんのこと?え?この人が?!私の友達が?!
それでも彼は普通でした。穏やかに一言そう言ったのです。
私は回答に困りました。これまた私が生きてきた日本の環境ではこのような言葉は聞いたことが無かったし、それにスウェーデンで住んでいてもそれを自分に伝えられるとは思ってもいなかったので、どうしてよいか迷いましたが
「そうなんだ。知らなかったよ。でも、愛にはいろんなスタイルがあるからね」と答えました。この答えが良かったのかどうかは私には今でも分かりません。でもこれが精いっぱいでした。
その後私はいろいろと考えました。このことはおそらくスウェーデンではそう珍しいことではないのだということを。このこと、というのは「ゲイであること、そしてそれをカミングアウトする」ということ。それでも、おそらく彼は異国からきて異なる文化を持っている私をいくらか気遣って、今日のこの日、帰国まで数週間、という日を選んだのだという事を。
それは彼の思いやりだったのかもしれない、と今となっては思うのです。
文化の異なる国から来た人にいきなり言うにはデリケートな話題だと。
それでも彼はそれを隠さず、隠す必要は何もないというこの国の実情に合わせて、ただタイミングを選んで私にありのままを伝えたという事。
正直ショッキングな出来事ではありましたが、それは私がそう感じただけの事。自分の物差しでの見方だという事を後から感じました。友人は何も変わらず、優しい友人のままであるのは変わりない、ということ。
ちなみにスウェーデンでは同性婚も認められています。それもあとから知りました。彼のこの一言が無かったら、このように性に関することはなんとなく避けていた話題だったと思います。
5.まとめ
国が違えば結婚制度も恋愛も違う、ということがお分かりになったかと思います。
しかし、共通して言えることは、人はそれぞれ幸せを追い求めて生きている、という事。
事実婚でも、結婚でも、そして同性婚であっても、そこには相手を思いやる心が存在していて、「結婚こそが成熟した大人のあるべき姿」、「同性婚は神が許さない」などと区別すべきものではないのかもしれません。
愛情のある者同士が結び付き、ともに暮らし、幸せな時間を共有する。そのために国は法律を整え、権利を明確にし、お互いの生活を守るという仕事をします。
様々な法律・制度を整えたスウェーデンの今の姿が、日本の未来のヒントになるのかどうかはわかりません。しかしそこに、愛する者同士の生活を、生涯にわたって守ってあげたいという優しさが感じられないでしょうか。その点は、これはリーガルマインドにも通じますが、我々日本人も忘れてはいけない視点だと思います。
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