ノルディックウォーキングの効果 北欧生活で感じたこと
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最終更新日:2018/02/21
スウェーデン(Sweden), 北欧(North Europe), 生活(Life)
日本ではノルディックウォーキングが静かに流行しています。
森林浴のため、健康維持のため、病後のリハビリのためなど、その理由は様々です。
ノルディックウォーキングは北欧発祥のエクササイズで、オフシーズンのスキートレーニングとして始まりました。
その北欧では、ノルディックウォーキングに限らず、森の中でのウォーキングが盛んです。
スウェーデンに生活している間、私もよく森の中をウォーキングしました。
その中で、ノルディックウォーキングの効果を考え、北欧特有の気候や自然に対する意識、健康に対する意識の存在に気づいたので、ご紹介したいと思います。
1.ウォーキングはいつでもどこでも!
北欧に暮らしていた時、現地の人のお宅に遊びに行ったり泊まったりすると「ウォーキングに行かない?」とよく声をかけられました。それは日中であることはもちろん、夕食後、あたりはもう薄暗いときでもありました。
現地に住み始めた最初のころは、声をかけてもらったのだから、とその相手の気持ちを思ってウォーキングに便乗していた私。生活に慣れてくると「またウォーキング?」と多少このお誘いにうんざりしながらも便乗。そして、いつしか生活が長くなってくると、自分から声をかける、もしくは自分一人でもウォーキングに繰り出す、という変化が自分の中に起こってきました。
あなたは生活の中にウォーキングの時間はありますか?忙しい毎日に追われ、それどころじゃない、という方も多いのではないでしょうか?
北欧ライフで感じた事は、ウォーキングの時間は特別のものであるけれども、その行動は何も特別なものではない、ということ。いつでもどこでも、そして誰とでもできるものなので、ぜひ生活の中に取り入れてもらいたいと思うのです。
ウォーキング、と書くとなにか特別な靴を履いて特別な方法を守らなくてはいけないのかしら?とも思われそうですが、そうではありません。散歩がちょっとグレードアップしたものが、ここで言うウォーキングであるとイメージしてみてください。
2.なぜウォーキングが盛んなの? いくつかの理由
誰でも一度はウォーキングをしたことがあるでしょう。その時、どんな気分でしたか?
それが、答えの一つであるように私は思います。
私が北欧でウォーキングをした時に感じたのは、爽快感。
ちょっと長いかな?くらいの距離をおしゃべりしながら、もしくは一人でもくもくと(音楽を聴きながらという事もありました)歩き続けていくと、家に帰りついた時には、心地よい疲れが体を覆います。しかし、頭の中はさっぱりとしています。
ジョギングをするのは苦手だけれども、ウォーキングならもっと敷居が低い、こういう人がいますが、私の気持ちもこれに近いです。
汗をかく量はジョギングと比べたらとても少ないし、移動距離だって比にならない。でも、ウォーキングは続けられますが、ジョギングはなかなか続けられません。
何でもそうですが、その人にとって「続けられること」の方が良いのです。
もし、ジョギングの方が私には合っているわ、というのであれば、それも素敵な事。どっちがいいとかいうことではないのです。
北欧の人がこれほどまでにウォーキングを好んでいるということには、爽快感を味わえることのほかにも、たくさんの理由があると思います。
北欧ならではの理由があるのではないかと思い、筆者なりに3つを挙げてみました。
(1)北欧特有の気候 夏を楽しむ
まず一つ目に、北欧を取り巻く自然環境が挙げられます。
北欧は、冬が長く、夏がとても短いです。
短い夏の待ち望んだ日の光の下で、家族や大切な人と表を歩くことは、とても贅沢な時間なのです。
スウェーデンやノルウェーは、縦に長い国土を有し、北部に行くにつれて、冬は日照時間が非常に短くなるどころか、場所によって真冬は太陽が見られない、ということだってあるのです。
逆にこのような場所は夏は沈まぬ太陽、そう「白夜」が見られるのです。
一年中太陽が見られる日本に住む私たちにとっては、全く違う気候を有しているのがこの北欧の国々。
日本では、冬でも太陽が見られ、元旦にはそろって「初日の出」を拝みに出かけます。どちらかというと、日本は四季がはっきりしていて、春夏秋冬それぞれの季節の長さもそう大きくは変わりません。ここが北欧との違いです。
スウェーデンの冬はどんよりと暗く、日本で言う梅雨の時期のような空が毎日毎日頭上に表れます。そして太陽はすっきり出ません。全く持って気が滅入ってしまいます。
朝も昼も夜もどんより。太陽が出ないのですから、一日の中での空模様変化もほとんどないのです。
おまけに雪が降ります。前日の雪に今日の雪が降り積もるという毎日。
日本だって梅雨の時期はなんとなく気分がすっきりしませんよね。それが数か月もスウェーデンでは続くのです・・・・。雪景色はきれいですが、ドンヨリ空、想像してみてください。
このような気候を北欧の人は何年も、それこそ生まれてから高齢になるまで毎年経験するのです。ですから彼らは、お日様のありがたみを我々日本人より強く感じている傾向があります。
日本では「紫外線が強くなってきた」「今日もまた日差しが強い」とマイナスに捉えられることも多い「日照状況」ですが、北欧では今か今かと春を待ちわびるのです。そうして、夏には体全身で日光を浴び、また来る長い冬へと備えていくのです。
長い冬が終わり、春が来ると、新緑が生き生きと芽吹きだします。この時期の北欧の森はとてもきれいです。森だけでなく、住宅地にある木々もとても鮮やかな緑になっていきますし、花も咲き乱れます。
季節がこうなのですから、人間も伸びをし、活動的になっていくのは自然な事。町にはウォーキングをする人が増えていきますし、週末に森などに行くと、ポールを両手に持ち、腕を振ってノルディックウォーキングと呼ばれるウォーキングをしている人たちを数多く見かけるようになります。
待ち望んだ日の光、あたたかい季節。外出しない理由はありません。夕食後に長い「夕方」を味わいながら、家族と、そして大切な人と表を歩くことは、とても心豊かな時間だといえるのではないでしょうか?
(2)自然に対する意識 自然を共有する
二つ目です。
自然環境と合わせて北欧を語るうえで外せないのが、自然に対する権利です。
スウェーデンには、「自然享受権」というものがあります。日本にはない権利なので、始めてこれを聞いた人はとても驚くことが多いようです。
自然享受権とは、簡単に言うと、「自然はみんなのもの」ということです。
この「自然」には、森に限らず、個人の庭や林なども含まれます。国有であろうと私有であろうと、自然はなんでもみんなのもの、ということ。とても心が広い、とこれを知った時、私はとても驚きました。
自然享受権があることで、人は誰でも好きな森に入りウォーキングなどを楽しむことができます。素晴らしい森があれば、そこを皆でシェアするのです。
北欧はベリー類が豊富です。夏にはたんまりと実をつけます。ベリーを見つけた場合は、摘み取って持ち帰って食べても構わないのです。きのこも同様です。
しかし実際のところ、森などでこのようなことをするのは自由ですが、個人の庭に入り込んでベリーを摘みまくり、というのは一般常識からしてありえませんよね。
ということで、この自然享受権は、「みんなのものだから何をしても自由」ということではなくて、「迷惑をかけない範囲で自然の恩恵にあやかることできる」ということなのです。
ウォーキングをしながら見つけたベリーを摘み取るのも楽しいですし、小鳥のさえずりを聞くのも心の栄養になる。自然に対するマナーが徹底していて、決まりを当然のことと守りそして受け止めているからこそ恩恵を受けられていると北欧の人たちは感じています。
自身がウォーキングをしていて得たこの爽快感は、他の人ももちろん自然を通して受け取っているのだということを彼らは知っています。自分だけが良ければいい、ではこの自然享受権も継承していけませんし、自然も守っていけないのです。
他者共感~他者を寛容に受け入れることが、自分の権利も守られていることにつながっているのです。
(3)健康こそが財産
北欧の人たちはとても健康に気を使っています。
食べ物はとてもヘルシーですし、牛乳は乳脂肪分に合わせて、さまざまな種類がお店に並んでいます。
日本でも低脂肪牛乳は今ではよく出回っていますが、北欧で飲んだ低脂肪牛乳の中には「本当にこれ、牛乳?」というものもありました。コップに注いでみると、水に白い色を付けたのかしら?というくらいの薄さなのです。
ちなみに、スウェーデンには、「ONAKA」というヨーグルトがあります。
コーンフレークやシリアルなどにかけて食べます。
なぜオナカというのでしょうか?
現地の人に聞いたところ、「お腹にいいから」ということからこの名がついたようなのです。
日本にはない商品なのに日本語のネーミングがついている、ということでなんともユニークな一品です。
食に関する安全意識も高く、krav(クラブ)というマークがあります。クラブとは、スウェーデンのオーガニック認証団体です。認証を受けた食品には、このクラブマークが付いています。クラブの理念は、「全ての生産と消費は、健全な地球環境によってもたらされるべきである」となっています。
クラブ認証を受けた食品はお値段がいくらか高めですが、安全性が高く、健康的であるという事で多くの人に指示されています。
北欧は税金が高いことでとても有名です。スウェーデンでは、消費税が25パーセント!物を買う時の支払額はとても大きいのです。
収入の多くが様々な税金として取られていってしまうのですが、国民はそれを受け入れています。それはなぜなのでしょうか?
答えは、「払った分だけきちんと見返りがある」ということ。
「ゆりかごから墓場まで」という言葉が北欧を象徴するときによく使われていることは多くの方がご存知でしょう。生まれてすぐの赤ちゃんから、いいえ、実際は妊娠中から、そして高齢者になるまでと一貫して充実した福祉が受けられるのです。これらは全て税金が元になっています。
福祉制度の一つとして、医療費が挙げられます。
20歳までは原則無料。それ以降は自己負担上限額というのが定められており、日本円で年間約1万円ほど。
ということは、医療費もほとんど無料だという事が言えます。
医療費が無料なのだから、安心して病院にかかることができる。という事は、多少不健康な生活をしていてもいいのでは?なんて邪道な考えをもってしまわなくもありませんが、そうではないのです。
3.まとめ
ウォーキングという一つのアクションから、北欧やスウェーデンの様々な面が見えてきます。
閉塞感が漂い、なんとなく社会全体が行き詰っているような感覚さえ覚える日本の社会を変えるためには、北欧から多くを学ぶ必要も出てきます。
学ぶ、となるとなんだか大事のように思えてきますが、北欧らしさの一つであるウォーキングをまずは生活に取り入れてみましょう。
北欧では森をウォーキングすることがとても盛んですが、森が近くに無い環境に住んでいる人や、都会に住んでいる人たちは、普段は街中をよくウォーキングします。
ベビーカーを押しながら歩く人も多いくらい!、またその中にはパパもたくさんいます。
まずは生活圏の中でウォーキングを始め、週末やちょっと時間が取れたときには、郊外や遠くに出掛けてうつくしい日本の自然の中を歩いてみてはどうでしょうか?
いつもの景色がちょっと違って見えたり、新しい発見があなたを待っていますよ!
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